実は一番お問い合わせが多い症例です
大阪市内を中心に活動している、姫島訪問マッサージの平本鮎紗です。
訪問医療マッサージは、健康保険を適用してマッサージや徒手矯正術を行う医療サービスです。
後期高齢者なら1回数百円で施術が受けられるためお財布に優しく、定期的に訪問を行うため状態の維持、改善が見込めやすいところが大きなメリットです。
「脳梗塞後のリハビリをして欲しい」、「クモ膜下出血の後遺症で麻痺が出たのでマッサージを依頼したい」など、脳出血後後遺症の機能障害に悩まれる方からのご相談はこれまでにも多くいただいており、数年に渡る長期的なケアを行ったこともあります。
この記事では簡単に機能障害についてまとめ、普段私が施術を行うにあたって気を付けていることをまとめています。
脳出血後後遺症は、ダメージを受ける部位などによって変わる
皆さんご存じの通り脳には多様な役割がそれぞれの部位に備わっており、どの部位がダメージを受けるかによって機能障害の内容は大きく変わってきます。
主に大脳は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つに分けられ、
それぞれ運動機能、感情の抑制、言語活動、触覚、位置情報、聴覚、嗅覚、視覚、空間把握能力に深く関わっています。
どこの部位に出血が生じたかで機能障害の内容が変わるため、利用者様にお会いする前に、事前に頂いたカルテなどの情報はかなり参考にしています。
症状に合わせたケアが基本
片麻痺であれば麻痺側の徒手矯正術(関節拘縮を予防する手技)、嚥下障害があれば頸部の押圧など、利用者様に合わせたケアは非常に重要です。
また、情緒障害やうつ症状など、精神面の症状が強い方も中にはおられます。
利用者様ごとに症状はまったく異なるため、柔軟な姿勢で施術に臨むことが大事だと考えています。
早期のリハビリやマッサージは非常に大事
早期のリハビリ、マッサージの重要性が高いことは、医療、介護業界に関わる人間にとっては基本中の基本です。
発症後のリハビリ医療は、主に急性期、回復期、維持期の3段階で考えられています。
入院期間中が急性期と回復期、在宅生活(施設入所も含む)が維持期となっており、退院したからといってリハビリは終了するわけではありません。
医師やケアマネージャーさんに、地域のリハビリセンターやスポーツジム、介護サービスなどで運動を継続し、身体の状態を維持するよう促された方が多いはずです。
ほとんどの場合は何らかの機能障害により、今まで以上に身体のケアに気を配る必要があります。
姫島訪問マッサージにご相談される方は、「リハビリと一緒に気持ちの良いマッサージが受けられる」、「健康保険が適用されるから介護保険の枠を気にせずに使える」「当院なら施術時間が45分と充実している」などのケースがありました。
主な機能障害と、施術の際に気をつけていること
ここからは、当院が実際に施術を行うにあたり、気を付けていることについてまとめています。
運動麻痺
脳出血後後遺症の場合は、「片麻痺」といった表現を用いることもあります。
名前の通り、右上下肢、あるいは左上下肢に運動制限が生じる症状です。
当院ではまず、痙性麻痺か弛緩性麻痺かで施術の内容を変えています。
痙性麻痺の場合
ある程度自分で動かせる方…筋肉の伸張性維持、可動範囲内での誘導運動や抵抗運動
動かせる範囲がわずかな方…関節拘縮予防のための徒手矯正術(固まらないよう動かす手技)、誘導運動
自分で動かすことが難しく、ほぼ固定されている方…体液循環を促すマッサージ、徒手矯正術
弛緩麻痺の場合
発症直後の方に多くみられ、徐々に回復する場合が一般的です。
そのため日々の変動に合わせてリハビリ、マッサージを実施しています。。
運動神経(遠心性神経)の損傷が激しい場合は弛緩性が続くため、マッサージや関節運動で筋ポンプ作用による体液循環や筋の伸張性維持を図っています。
感覚麻痺(知覚麻痺)
こちらは運動神経ではなく、感覚神経が障害された状態を指します。体性感覚とも言いますがややこしいので簡単な言い方にしています。
完全麻痺(完全に触れられる感覚がない、自分で動かせない)
胴体等で麻痺の生じている腕を圧迫していないか、または不自然な方向に曲がっていないか、炎症が生じていないか、などに注意しながら関節運動やマッサージを行っています
不全麻痺(十分な力が入りづらい、四肢の感覚が鈍い状態)
マッサージや関節運動を利用者様の状態に合わせて実施しています。
その日の体調により、モチベーションや触れられた際の感覚が大きく左右されることがあるため、手技の強度は柔軟に変更することを心がけています。
しびれ(しびれ感、温覚の分かりづらさ、痛覚過敏)
利用者様ごとにニュアンスは異なりますが、同じ症状が続くことが経験上は多いです。
また、季節や天候の変化にも影響されやすい印象を受けます。
掌など、広い面を用いたマッサージで一時的な緩和を図れることが多く、その日の状態に合わせて実施しています。
視野障害(視野狭窄、複視、半盲)
まず見えづらい範囲を確認しています。
その上で動作において注意が必要な部分との関係性を分析し、改善を図っています。
(例…右側が見えづらいため、恐怖から左寄りに歩いてしまう。ステップ訓練でまずは一歩ずつ修正を行い、次第にまっすぐ歩けるよう促すなど)
また動作などを身振りでお伝えする場合は、見えやすい範囲で行えているかを意識し、余計なストレスを作らないよう心がけています。
嚥下障害(食べ物が上手に飲み込めない)
頸部や背部の筋肉に緊張が見られる方が多いです。
反応を見ながらのマッサージや、定期的な飲み込む動作の体操などを行っています。
〇〇が食べられるようになった、など結果が分かりやすいため、ご家族や施設スタッフとの情報共有を心がけています。
高次機能障害
大まかに分類しまとめています。
記憶障害(新しい出来事を覚えられない、物や人を忘れる、同じ質問が多い)
経験上、「覚える」ということにストレスを感じる方が多いです。
また、マッサージや自動介助運動(一緒に身体を動かす運動)など、受動的な運動に応じてくださる傾向にあります。
運動は、残存している長年の動作(起き上がりや腿上げなど)で安定しているものを活用します。
円滑な動作を連続して行えるため気分の向上も見込め、全体の運動パフォーマンスに影響することもあります。
遂行機能障害(自分での計画、実行が難しい、時間を守れない)
不安感が強い方には、こちらで計画をご用意していること、この施術プログラムで良いのかという確認を随時行い、なるべく解消出来るよう心がけています。
受動的な会話になりやすい傾向があるため、なるべく利用者様のご意見を聞き出せるよう工夫する必要があると考えています。
注意障害(集中力低下、2つの物事が同時に出来ない、ミスが多い)
施術中のお声かけを非常に重視しています。
特にマッサージからリハビリに移るタイミングや、リハビリ中の動作指導時は、集中力が分散しないよう身振り手振りや視線誘導まで意識しています。
集中して何かが達成出来ると、利用者様にも充実感が生まれます。
マッサージ中はリラックスされ、傾眠されることが多いです。
行動、情緒障害(興奮や暴力、大声、自己中心的になる)
多くのケースでは一時的なもので、施術の拒否が生じても原因を突き止めることで柔和することもあります。
(例1)夫婦で施設に入居されており、奥様が施術拒否。奥様の目の前でご主人に挨拶、施術の許可を得ることで、次第に拒否は生じなくなった。(言動から、ご主人との長年の関係性が影響していると推察)
(例2)寝たきりの男性の方で不意な大声、暴力あり。左側の完全麻痺による不安感が強まると生じる傾向があったため、訪問時は右手で左手を掴むよう誘導を重ねることで、情緒障害が軽減した。
長期に渡り拒否が生じる場合は、訪問時間の変更などで様子をお伺いします。
失認、失行
失認(五感、記憶に問題はないが、物の認識が上手くできない)
身体失認(自分の体や部位が上手く認識できない)の方の場合は、マッサージや自動介助運動(一緒に身体を動かす運動)を最初に行い、まずはどれくらい認識しているを確認します。
よく一緒に生じる症状として、主に左側の感覚障害や、左半側空間無視などがあり、ご本人の自覚がないことがほとんどです。
失行(道具の使用法や行為の順番など、日常の簡単な事が難しくなる)
訪問マッサージ中においては、お着替えや起居動作(起き上がりや立ち上がりなど)で生じやすい印象です。
まずは動作を分解し、1つ1つ行えるように意識したお声かけを行っています。
また次の動作を思い出しやすいよう、なるべく単語をパターン化して円滑な誘導を図っています。
半側空間無視、半側身体失認(体片側をないものとして扱う、認識していない)
認識していない側のお体に触れた際の反応を、非常に重視しています。
認識と現実にギャップがあることが多いため、精神面に配慮し愛護的会話や、廃用症候群を意識した他動運動(他者のみで行う運動)、また長時間同じ姿勢でおられることも多いため除熱やポジショニング、バイタル値計測は入念に行っています。
排尿障害
主に精神面の配慮を意識しています。
特に女性の利用者様の場合においては、施術中にいたしてしまうことは恥ずかしいことではない、等の話は訪問開始時に必ず行っています。
ちょっと話をそらし、腸のガスについても同様で、私もお店でマッサージを受けている時におならが出てしまい、恥ずかしい思いをしたことがあります(笑)などとお伝えすることもあります。
施術面としては、腹部指圧をカテーテルや胃ろうなどに注意しながら行うことがメインとなります。
掌、四指を使った優しいマッサージで、私のご好評いただく手技の1つです。
排尿筋が無収縮となり周囲の体液循環量低下も考えられるため、なるべく循環を促すよう実施しています。
認知症
精神的なケアを一番意識しています。
休みたい、運動したいなど、意欲の向いている方向に合わせて施術プログラムを組み、まずは訪問マッサージが楽しいひとときになるよう心がけています。
ある程度信頼が得られるようになってから、「今日はお散歩しませんか」「もうちょっと運動してみませんか」「今日はもうゆっくり休みませんか」など、ご提案をすることで、素直に応じてくださることもあります。
実際の症状はかなり人によるため、型にハマらず「楽しんでもらえる」ことが大事だと学びました。
うつ症状や感情障害などの精神症状
精神面に配慮した導入を心がけています。
特にうつ症状の方は、「適切な距離感」が大事と考えており、心の病気ではなく「脳の病気」と正しく認識することがコミニケーションの第一歩と強く考えています。
ある利用者様のお話ですが、ご気分が優れない日に身体を自分で動かせず、後日謝られたことがありました。
うつ症状の認識は、まだまだ差があると私は考えており、年齢的にも色んな苦労があったんだなと考えると胸が痛くなりました。
こちらが正しく病気を認識することで「謝らなくていいんですよ」と心からお伝えし、いい意味で淡々と施術し、結果的には利用者様が余計な気を使わなくて良くなると考えています。
施術面においては、ゆっくりとした圧、テンポで副交感神経が優位となりリラックスできるよう図っています。
毎回は難しい場合が多いですが、よく眠れたなどのお声が聞けることもあります。
最後に…継続的にケアを行うことで現状の身体能力維持が見込みやすい
簡単にですが、様々な機能障害の例をご紹介しました。
脳出血後後遺症の利用者様は、訪問マッサージが必要と感じてくださるケースが多く、長期的な施術期間となることが多いです。
インフルエンザ流行などの施設閉鎖でしばらく訪問が出来ないでいると、「体の調子が落ちている」とケアマネージャーさんに言われることもよくありました。
マッサージとリハビリを定期的に行うことで、現状の身体能力の維持は図りやすいと自分でも感じています。
健康保険が使える姫島訪問マッサージなら、充実した施術時間と手技、毎月の施術報告書など、誠意をもったご対応をさせていただきます。
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